「青春祭」(1985年)~中国文化大革命時代、ある女学生の疎開先での記憶

以下、自分が学生時代に見た、古い昔の中国の映画(1985年製作)ですが、なかなかいいので、ちょっと紹介してみます。

文化大革命時代、ある女学生が、北京から雲南省のタイ族(傣族)の村に、強制的に疎開(下放)させられた時の話ですが、

南方の自由奔放な文化との違いにとまどいつつも、徐々にその環境に馴染んでいく様子が、彼女の視点を通じて、生き生きと描かれています。

ストーリーもさることながら、タイ族(傣族)の自由奔放な習俗や熱帯雨林の農村風景なども見どころです。


Qingchunji 青春祭 Sacrificed Youth 1985 Part One with English subtitles(前後編に分かれています)

青春祭(1985年製作) あらすじ

文化大革命時代、「李纯」は、北京から、はるばる南方の雲南省に下放される。重苦しい鐘の音と奇妙な旋律の民謡。いかにも遠く離れた異郷の地にやってきた感じ。ホームステイ先には、おじさん(大爷)と90歳のおばあちゃん(奶奶)が一人だけ。おじさんは普通話ができるので意思疎通はできるが、おばあちゃんとは全く、意思疎通は不能。

見るもの、聞くもの、すべてが、戸惑うことだらけ。現地の生活に順応しようと、ステイ先で水くみをしたり、木を切ったり、様々な活動に参加するが、なかなか馴染むことができない。服装は質素なものの中にこそ、美があると教わってきたが、ここには、そういう考え方は異端のようだ。

クラスメイトといっしょに、竹を伐採する最中に、男女の睦びあう「歌垣」に遭遇。男女の一団が対峙しつつ、キャーキャーいいながら、歌を歌いあっている。お互いの感情を隠そうともしない、彼らの習慣に驚きを禁じえない。

女たちは、沐浴タイム。すっぽんぽんで泳ぐ。開放的な南方の少女たちの前で、文化の違いというものを見せつけられる。

学校の授業。10点中6点しか取れず、がっかりする李純。先生からは「北京から着たばかりだから、しょうがないよ。」みたいな変な慰められ方をする。一方、村一番の美人「依波」は10点。引け目を感じる。

何かが違う。何かが・・・池の端でたたずんでいると、牛飼いの男が、急に蓮の花をくれる。突然のことにぎょっとするが、髪にさしてみると、心のなかで何かがはじけた。

タイ族の民族衣装に袖を通すと、それを見たステイ先のおばあちゃんが感激して、自分の若い頃の銀のベルトをだしてきて、これをにつけろと勧める。苦手だったおばあちゃんとの距離も縮まった。

翌日、民族服姿で登校すると「あら、その衣装どうしたの?」と言う感じで、自然とクラスメイトの輪の中にとけこめた。

週末?ある店の前で、押すな押すなの大盛況。何かと思いきや、姿見ビジネス「私って、こんなんだったんだ!」ネットはおろかTVもない時代、何でも商売にしてしまう中国人というのは、今も昔も同じ。

そんあある日、郵便局で、お金が足りないところを貸したのがきっかけで、同じく下放された男子学生「任佳(renjia)」と出会う。

露店の本屋。むさぼるように、本にくらいつく人々。活字というものが、まだ貴重だった時代。医学書なんかも売ってあって、李純は、ここで医者を志すというようなことをもらしている。

ステイ先の「兄さん(大哥)」と呼ばれる男との出会い。ワイルドな男のアプローチにとまどう。

徐々に現地の生活にも慣れてきたが、逆にそれが心の隙を生む。ある日、山の中で作業をしているうちに、仲間とはぐれて遭難。しかし、ステイ先の兄に助けられ、事なきを得る。

ある時、村の子供が、急病で倒れたとき、医者の卵ということを見込まれて、夜中につれてこられたが、母親はシャーマニズムを信奉しており、なすすべもなく、ただ一心に祈るだけ。しかし、一刻を争う状況の下、李純は、医者のマネごとでやって、子供の一命を取り留めた。

男子学生「任佳」に再会する李純。男の牛車に乗って移動する。男は、今の生活に不満タラタラの様子で、生活上の不満を漏らすが、彼女は、すでに生き生きモードに突入しているので、話が噛み合わない。

村祭の日。生贄の牛を殺す牛飼いの男。ファイアーストーム。踊り狂う村人。一方、祭りの裏では、村の男女が恋を語り合う場と化している。

李純と任佳も、闇で語らうものの、イマイチ盛り上がらない。「今、何を考えている?」「やっぱり北京の女だな。」素直になれない二人。

それを見た、ステイ先の兄が嫉妬して任佳を殴ってしまう。ステイ先の兄のことを密かに想っている「依波」から、「彼は、あなた(李純)のことが好きなのだ。この村から出ていってほしい。」と言われ、李純はいたたまれなくなって、一人、村を出ていく。

地元?で教師の道に進む李純。任佳がやってきて、大学進学のことを口にするものの、取り合わない。

ある日、ステイ先のおじさんが訪ねてきた。祖母が死に瀕していると告げる。戻ってみるものの、すでに祖母は・・・。祖母の棺、火葬。荘厳な雰囲気。

さらに数年後。もとの村にもどってみると、そこは、すでに何もなかった。濁流の中に飲み込まれて全てをなくした村を前に泣き崩れる李純。

傣族、ダイ族

傣族(daizu)は、主に雲南省に居住、人口一千万人。水稲耕作を行い、小乗仏教を信仰する。独自のタイ文字による文献が豊富で、タイ暦もあるとのこと。タイ暦正月の水かけ祭は有名。

参考資料

青春祭(张暖忻执导电影)_百度百科

シネマジャーナル31号 中国の女性監督たち 第一弾

中国文化

Posted by 老板